Baby boo!
◇ ◇ ◇
なんでっ、なんで、ここにいるのーっ!
入り口で彰人さんの姿を見た瞬間、お店の裏の方へすぐさま逃げ隠れた私。
え、待って待って。
彰人さんってこういう趣味があったの?
あんなに普段えらそぶってクールな彰人さんが。
実はメイドさんが好きなのっ?
頭の中はもうパニック状態。
しかしその前に、改めて自分の姿を見下ろして青ざめる。
ピンク色のメイド服に白いふりふりのエプロン。
白色のニーハイに、そしてメイド服と同じ色のリボンのカチューシャ。
あぁ、こんな格好絶対にバカにされる……っ!
「ちょっと、いちごちゃんどうしたの」
店の隅に隠れホールに出ようとしない私に気付いた、めろんちゃんが駆け寄ってくる。
「ごめん、なんだかお腹が痛くなっちゃって……」
いててて、とその場にしゃがみこみお腹を擦って痛がる素振りをする私。
「そうか仕方がないね、裏で休んでなよ」
あぁ、さすが優しいめろんちゃん。
いそいそと休憩室へ行こうとした矢先、ぐいっと腕を掴まれた。
そこには、腰に手を当てた呆れ顔のぷりん先輩がいた。
鬼のフロアリーダーだ。
「何仮病使ってんの、さっきまでカツカレーにチョココロネまで食ってたくせにっ」
あぁ、そうだぷりん先輩と休憩一緒だったんだ。
そこで私は確かにカツカレーにチョココロネまで食べていた。
しかし、なんと慈悲の欠片もない。
そのツインテールの片方思いっきり引っ張ってやろうか。
「ほら、忙しいんだからホール出た出たっ」
ぷりんって名前のくせに全然甘くない。
下唇を突き出し、下を向きながらホールへ出る。
あぁ、どうしようか。
なるべく彰人さんの死角になるようなところにいよう。
そうだ、変装しようっ。
そう思い立って、衣裳部屋で前にくすねたパーティー用の鼻付き丸眼鏡をかけてみる。
おぉ、これならバレないかも。
なんて調子に乗って浮かれていたら、そんな私の姿を見たぷりん先輩が静かに激昴し近寄ってきた。
「……何ふざけてんのよ」
「す、すいません」
小声でそう脅され、すぐさま眼鏡を外す。さっきまで、萌え萌えきゅんとぶりぶりしながら魔法をかけていたのに。まるで別人のような変わりよう。