Baby boo!
「とりあえずその手を離せ」
げんなりした彰人さんがその人から私の手を離させる。
しかし興奮冷めやらぬ様子で、キラキラした目で彰人さんに説明し始めた。
「ほら先輩、俺の机の上のフィギュアに似てるでしょ?」
「はぁ?知らねぇよ」
フィギュア?
なんだろうか、アニメかなんかのキャラクターだろうか。
「このショートボブとタレ目、ぷっくりした唇に、若干ぽっちゃり気味なちんちくりんな体!そしてちょっと恥じらうこの姿は、まさにルリルリちゃんだよーっ」
ぽっちゃり気味……?
ちんちくりん……?
なんだろ、今悪口混ざってなかった?
空耳だろうか。
そして、また手が私に伸びてきたところを彰人さんに振り払われるその人。
「ちょっと待て、とりあえずお前は黙ってろ」
……あぁ、こう改まるとちゃんと彰人さんの目を見れない。
まだ残念イケメンさんにぺらぺら喋ってもらっていた方が良かったかも。
「……昨日はどこに泊まったんだ?
「えっと、あの、ま、漫画喫茶に……」
「今日はどこに泊まるつもりなんだ。あてはあるのか?」
「……」
答えられず黙ってしまった私に、すかさず横槍が入った。
「ないならうちにおいでよ。ちゃんとご飯も作ってあげるよ」
顔は良いのに色々と残念なその人が、ニコニコしながら言う。
悪い人じゃなさそうだけど……。
「いきなり何を言い出すんだ」
「大丈夫。先輩よりずっと優しいお兄さんだから安心して」
「あ、あの」
遠回しに断ろうした時、彰人さんがきっぱりと一蹴した。
「だめだ。あてがないならうちに帰って来い」
胸がとくんと高鳴る。
少しでも自分のことを大切に思ってくれているような気がして嬉しい。