Baby boo!
……あぁ、最悪だ。
さっさとこの感触から解放されたくて、足早に病室を出ようとしたところ、看護師に引きとめられた。
「せ、先生、とりあえずこちらをどうぞっ」
気を利かせた看護師が、甚平タイプの病衣を持ってきてくれたのだ。
使っていない近くの病室に案内され、やるせない気持ちでその病衣に着替える。
汚れたズボンとシャツは袋に入れてゴミ箱へ。
しかし急いでいたのか、1番小さなサイズを持ってこられてしまったようだ。おかげで、腕も足も袖が7分丈でつんつるてん。
病棟に戻ると、看護師が俺の不恰好な姿にはっとして目を張った。
「シャワー浴びたら、点滴オーダー入れとくから」
そんな視線も気にせず指示を出す。
「は、はい」
しかし、笑いをこらえている看護師2人。
「……なんで小さいの持ってきたのっ!」
「す、すいません、急いでたんですー」
「あれじゃ、つんつるてんじゃっ
「……何?」
小声で話してるつもりなのだろうが全て丸聞こえ。むっとして聞き返すと、2人は上がる口角を抑えながら口を揃えて言った。
「いえ、なんでもないです……っ」
……なんて厄日だろう、吐物をかけられるわ看護師には笑い者にされるわ。
げんなりしながら、院内のシャワールームへ直行した。
シャワーを浴びた後、病棟に戻り指示を出して仮眠室へ。
数時間の浅い睡眠をとると、朝になっていた。
……あぁ、またあいつの顔を見なくちゃいけないなんて。
自分に吐物をぶっかけた奴の顔なんて、できればもう見たくない。
あいつの顔を見たら、またあの鳥肌がたつような感触を思い出しそうだ。
しかもこの病衣で院内をうろちょろしなきゃいけないなんて、なんて羞恥プレイだろうか。
明るくなって、ちらほら院内スタッフが見受けられるようになったなか、病室へ向かう。
俺と分かると慌てて挨拶され、ちらちら何事かと好奇の目を向けられる。
そんな中、後ろから声をかけられた。