Baby boo!
その日は珍しく仁菜が静かで。俺が一人暮らしを恋しがっていることをやっと理解してくれたのかと思って、少し感心していた。
お前もやっと人の気持ちを汲めるようになったのか、こうやって人間っていうのは成長していくんだな、そんな風に思って、夜布団に入ったところ。
後ろから誰かが忍び込んできた違和感に、思わず声が低くなる。違和感がある方を睨み付けて、尋ねる。
「……お前何やってんの」
そこには照れる仁菜が。
「へへ」
俺のベッドはダブルベッドだが、別に二人で寝るために買った訳ではない。一人で伸び伸び寝れるようにと買ったのだ。そこに侵入してくるとは、不愉快極まりない。
「照れてんじゃねぇよ、きもちわりぃ。5秒以内にここから出てけ。5ー、4……」
「待って、待ってストップ。今日だけダメですか?」
「ダメだ」
「彰人さんのけちーっ」
出ていく気配のない仁菜に強硬突破に出ようと、その体を捕まえて外に出そうとし手を伸ばした瞬間、その手を逆に取られて小さな両手でサンドされる。
「彰人さんは人肌恋しくなったりしないんですか」
「しないね」
その両手にぴとっと自分の頬をくっつけ、すりすりしてくる。
その瞬間ぞわぞわと全身が粟立ち仁菜の手から逃れる。
「やめろ鳥肌が立つ」
「え?ムラムラする?」
「本当一回この頭かち割って中身見てみてぇな、お前がこういうことするから追い出されたの分かんねぇの」
「ごめんなさい、もうしないから。ただ、彰人さんは仁菜のことどう思ってるのかなって」
「どうって?」
「結婚相手誰でも良いっていうなら仁菜を選んで欲しいと思って」
頭がクラクラしてきて思わず額に手をあてる。
「嫌だよ、なんでこんな手のかかりそうな奴」
「ちゃんと大人なレディーになることを約束しますっ」
「無理無理、たとえ天地がひっくり返ろうと、明日この世界が終わるって言われても、無人島で二人きりになったとしてもお前とは絶対にそういう関係にはならない自信がある」