Baby boo!



「すいません、どちらの部屋の患者さんですか?こんな時間にどうされました?」

そりゃあ、朝からつんつるてんの病衣を着ながらすたすた歩いている男がいたら不審に思うだろう。

「……俺だ」

そう言いながら振り向くと、そこには他病棟の看護師がいた。

「せ、先生……っ!?い、一体どうされたんですか!」

驚いた看護師にそう聞かれるも、事情を話す気にはなれず、大丈夫だとだけ言って奴の病室へ向かった。




病室に着くと、問題の奴は明け方目を覚ましすっかり酔いも覚めてるとのこと。

……しょうがない、これも仕事だ。
奴がいるベッドのカーテンを開け、顔を見に行く。

「……楠原さん、大丈夫?」

「あ、もう大丈夫です。昨日は本当に色々お世話になりました」

奴は俺が来ると、ベッドの上に座って明るい口調でそう答えた。
昨日俺に向かって吐きちらかしたのを綺麗さっぱり忘れているよう。

思わず、眉間に皺が寄ってしまう。

「ご迷惑をおかけしてしまい、今後は気をつけます」

ぺこっと頭を下げる姿に、俺も笑って応えた。

「ははは、本当だよ」

それを見た看護師がひっと言いながら俺に耳打ちする。

「あ、あの、先生、目が笑ってません……っ」

「あれ?おかしいな、笑ってるつもりなんだけど」

苛立ちと疲労で口角をあげただけの笑みを浮かべる。
それは、はたから見ると恐ろしい形相をしていたようだ。


そして、病棟内のパソコンで退院書類を仕上げていく。

しかし、そんなつんつるてんの病衣姿で朝から主力のパソコン前を陣取り、書類を出す姿はどうみてもおかしかろう。

朝出勤したばかりの事情を知らない看護師達が俺の方を見ながら、コソコソ何か言っていたが、もうこうなったらヤケクソだ。

居心地の悪い雰囲気にさっさと仕上げて、逃げ出すように病棟を後にした。









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