Baby boo!

緊急事態?

ちゃんと意味分かって使ってるのだろうか?彼女からはそんな切迫感一切感じられない。

しかし、唯一の家族だなんて、大げさだな。

どうやら俺の知らない複雑な事情があるようだ。

そう考えると今までのようにあからさまにないがしろにはできず、少しだけ情が湧いてきてきた。

「……色々大変みたいだな」

少しだけなら話を聞いてやらなくもないと、話の切り口になるようにそう言った。

「はい、世の中はどうも塩辛くて……」

シオカライ……?
世知辛いと言いたいのだろうか。

突っ込もうと思ったが、今はスルーして彼女の話をちゃんと聞いてやることに。

しかし、そんな俺の、ほんの少し見せた優しさも空振りに終わることになるとは……。

「何か抱えてるものがあるなら、周りの大人に、

「あ、そろそろ降りる駅に着きますね。ハムちゃん、またあとであげるからね」

……相談するんだよ、と続くところを奴は聞いていたのか、いなかったのか、俺が話しているのを遮ってハムスターに話しかけた。

そして、奴はさっきまでと変わらない明るい口調で、にこにこしながら全く興味のないネズミを紹介してくれたのだ。

名前はハム子て、通称ハムちゃんと呼んでて、好きな食べ物は云々カンヌン。

聞いてもいないのにハムちゃんとやらの話を聞かされるはめに。


……なんなんだこいつは。
病院のおばあちゃんやおじいちゃんよりも話が噛み合わないぞ。

人がせっかく優しくしてやったというのに。

しかも、そんなに大事にしてるくせに、ハム子のハムちゃんて……。
ネーミング安直過ぎやしないか。
しかも通称ハムちゃんなら、名前それだけでいいだろ。
ハム子って名前いるか?

今の若い子は皆こんなぶっ飛んでるんだろうか。たまに、病院にもおかしな子はいるけど。

俺にはついていけない。
短時間だというのに、話の相手をしているだけでどっと疲れた。

さほど電車に乗っていないはずなのに、もう数十分も乗っていた気がする。


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