俺だけが知っている
知っている
「あ、透だ」
家に帰ってきてテレビを見ながらのんびりしていると、莉菜の兄の透が出ているCMが流れた。
「透すげーなー。テレビで見ない日無いんじゃないか?」
「そーかもね。目立つの大好きだし天職なんじゃない?」
莉菜はそう言って笑うけど、俺のいるソファーの目の前にもたれて座っている彼女の背中はどこか寂しそうだ。
周りを気にせず堂々と出来る兄が羨ましいのだろう。
目の前の彼女をひょいと抱えあげる。
「うぇ⁉何⁉」
狼狽える彼女をそのまま自分の足の間に座らせて後ろからぎゅっと抱きしめた。
「ちょっ……恭弥?」
「なー莉菜。これ、開けてみて」
ソファの隅に置いてあった今日の買った物の中から一つの袋を取って渡す。