カレとカノジョの関係。
♡33 チャンスは突然に
一誠に告る。
そう決めたのはいいものの…相変わらず臆病なあたしは、全然それを実行できずにいた。
蘭子ちゃんにも一誠、暫くあたしと話したくないって言ってたみたいだし…。
…って、そんなの言い訳だ。
気持ち伝えて、すっぱりフられるって決めたんじゃん。
彼女がいる人に告白するなんて最低だ。
でも、それでも諦められないから…伝えるだけ伝える、って決めたんじゃん。
早く言わなきゃ…いつまでもこのままじゃ、蘭子ちゃんにも…失礼だ。
「…というわけだが…聞いてるか高倉」
「痛っ」
バシッと頭を殴られ顔をあげると、担任の先生が呆れたような表情で見下ろしていた。
どうやら、その手に持っている出席簿で殴られたらしい。
「朝からボケッとするなよー。シャキッとしろシャキッとー」
「…はぁい。すみません」
「じゃ、そういうことで、やりたい者は近日中に名乗り出るように」
そして先生は最後にクラス全体を見回すと、怠そうに教室を出ていった。
…やりたい者?名乗り出る?一体何の話だろう。
それに心なしか、教室もいつもよりざわめいているような…。
「のんちゃん」
あたしはのんちゃんに聞いてみることにした。
「先生さっき何の話してたの?」
「んー?なんか、テレビがうちの学校来るらしいよ」
「え、テレビ?」
「そう。“高校へ行こう!”だって」
「えっマジで!?」
高校へ行こう!…あたしも知ってる。
5人組の超人気アイドルグループ、B5(ビーファイブ)が出てる番組だ。
毎週どこかの高校へ行ってロケを行うというもの。
結構面白くて、あたしもよく見てる…
「で、“高校生の主張”ってコーナーに出たい奴は名乗り出ろ、だってさ」
「そうなんだ~…」
高校生の主張、っていうのはその番組の中でも超人気コーナー。
内容は高校生が一人ずつ、全校生徒の前で思い思いの主張をするというもの。
主張は様々で、先生への文句だったり、誰かへの愛の告白だったり…
…告白?
「誰か立候補するのかね~?あたしだったら恥ずかしくて絶対ヤだけど。
…希咲、聞いてる?」
その時にはもう既に、のんちゃん声は届いていなかった。
「…それ、いつだって?」
「え?」
「収録の日いつか言ってた?」
「…え、確か来月の10日だったような」
…来月の、10日。
…その日は、奇しくも
あたしの誕生日だ。
…なんだかビビッときた。
これかもしれない。
ううん、逆に、こうでもしなきゃあたし…逃げる。
逃げたくない。
「あっ…希咲!?」
あたしは教室を飛び出した。