アナザー…
ここは如月(きさらぎ)警察署。

「強者君、強者君!」

署内にそこの署長の声が通る。
そして、一人の若い刑事が振り向いた。

「なんですか?署長。それから強者君じゃなくて、久藤英治(くどう えいじ)です!!」

彼の威勢のよい声が響く。
普通ならばそんな態度で上司に向かえば勿論怒鳴られ、冷たい目で見られるだろう。
だが、彼がそうならないのにはある理由があった。

「そんなに眉を吊り上げないでよ、久藤君」

署長はおだやかに笑った。

「ところで僕になにか用ですか?」

「ああ、」

そう言って後ろを向いた。

「美並君!」

そう署長が呼ぶと、まだ新人のような雰囲気の女性が出てきた。
そして彼女は頭を下げる。

「どうもはじめまして、久藤さん。美並春子(みなみ はるこ)です。」

「美並君は新人でね、君の元で指導をしてもらおうと思ってね。」

「そうですか。でも僕よりももっとベテランの方がいるはずでは?」

「まあ、君にはかなり腕があるし、それに…」

署長はふふふ、と笑って彼女をよろしくと言って立ち去った。
それに、の意味が分からず英治は首をひねった。

「えっと、春子だっけ?俺は英治でいいからな」

「えっ、そんな…」

英治は微笑んだ。

「これから仮にもコンビを組むわけだし、打ち解けたいからな!」

「では、英治さんで。」

少し春子は恥ずかしそうに微笑んで隣の自分のデスクに座った。
そこで署長がやって来た。

「そう言えばいい忘れた。二人にはこの事件の担当を頼むよ。」

そう言って書類を二人に渡した。
それから春子に耳打ちをする。

「どうだい?久藤君と仲良くねー」

「からかわないでください!!!」

春子の声が署内に響き渡った。
そして、署長は微笑ましそうに二人をみると去っていった。

「俺達の担当する仕事ってなんだ?」

「なんでしょうね?」

二人は書類に目を通す。
内容はこうだった。

最近ある廃屋での行方不明事件が多発している。
そこには幾つか異惑付きである。
その場所の近くで幽霊を見た、そこに引きずり込こまれそうになったなど、ありきたりなものが多かった。

「なんだ、こんなもんか。」

「そうですね。明日から夏休みに入る学校が多いようですし、学生の肝試し等に使われないよう明日から取り掛かりますか?」

「そうだな。」

英治は頷いた。
そして少し怪訝そうな表情になる。

「しかし…これが気になるな。」

英治の、指差す先にはこう書いてある。
【必ず武器を携帯すること】

「まあ、そこまで気にする必要はないか。」

それから出発は明日の早朝、武器など各自必要なものを揃えここに集合してから支給の車で出発することにした。
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