スイートピー

「はあ?吉村休みかよ。」

あいつまた朝までネトゲやってて起きられなかったんだな。

「今日は1日長いなちきしょー。」

クラスの中では、吉村が唯一の話し相手だ。

あいつは、もっさりして清潔感の欠片もない、どんよりした感じが僕とよく似ている。

「あーつまんね。」

席につき、ふと周りを見ると女子が3人くらい、こちらを見てヒソヒソやっているのが目に入った。

「ねーねー。滝口また独り言言ってる。」

「マジキモいしー。」

「前髪伸び放題で、ばっさばさー。ヤバいよねー。」

「洗ってないっぽくない?」

「ほんとー?やだー。」

「何であんなゴツいメガネかけてんの?」

「もしかして、ぶっといフレーム越しにうちらのことチラ見してんじゃないー?」

「やめてー。」

そんなわけないだろう。

どんだけ想像力豊かなんだよ。

風呂くらい毎日入るわ。それにお前らなんか興味ねえよ。

言えないけど。

今日は朝から気分悪い。

机に突っ伏して、ふて寝を始めたその時だ。

「みんなやめなよー。聞こえるじゃん。」

天使の声がき聞こえる。

「本人目の前にいるんだからさ。ね?やめとこっ。」

長沢さんだ。

「梨里香…。だってさあ。キモいよー。絶対うちらのことチラ見してるよ。」

だからしてねえって!お前なんか大して可愛くねえよ。

「まあまあ。それよりさあ、今日うち来ない?梨里香チーズケーキ焼いたんだー。みんなでお茶しよー。」

「行く行くー。」

僕も長沢さんち行きたい。

言えないけど。




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