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二階から降りてきた貴が無言のままドスンと席につく。

低血圧の彼には誰も声をかけない。いつものことだ。

「さっきから気になってたんだけどさ」

兄があたしの顔をまじまじと見つめる。

「顔色悪いね。大丈夫?」

昨日会ったばかりの人に弱音は見せれない。

「だいじょ ぶ」

バレたかも…。だけどまた病院生活に戻るわけにはいかない。

兄は聞いているのか聞いていないのか 鞄の中をゴソゴソあさり始めた。

「あった!これ、あげるよ」

手に乗せられたのはかわいらしいラッピングのキャンディだった。

「元気が出るヤツ。舐めてみて」

中からは想像できないくらいの禍々しい緑色の飴玉が出てきた。

「…罰ゲームですか?これ」

いいから、いいからと促されて渋々口に放り込む。

「苦ぁ… 何かアメリカンな味」

「日本語で“良薬はなんとか”て言うでしょ?それだと思って舐めていて。すぐ良くなるから」
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