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撮影は何とか進み、一息入れようとしたその時“ズキン”と胸に嫌な鼓動を感じた。

息がしにくくて、思わず壁にもたれてしゃがみ込んでしまう。

お願い… あと少しの間だけ治まっていて…

しかしその願いとは裏腹に、痛みは徐々に強くなり治まりそうな気配すらしない。

「Angel, 眠タイ デスカ?」

「…くっ…!」

パパさんに声をかけられるが、痛みで答えられない。

顔をしかめ、胸を手で押さえる…

「Angel, are you OK? Ken, Ken!!」

異変に気づいたパパさんが甲ちゃんを呼んでくれた。

駆け寄った甲ちゃんはあたしの身体を支えながら、脈を取る。

そしてドレスを少しだけずらすと、聴診器を滑り込ませた。

「苦しいけど、できるだけゆっくり呼吸して…」

真面目な表情で心音に集中するその横顔は紛れもなくお医者さんの顔だ。

さっきまでの騒々しい撮影現場は一変、緊迫した空気が走る。
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