sEcrEt lovEr

誰もいない病室でただ一人で泣いた。

自分の身に何が起こったか悟ってしまった時はすでに恐怖と不安で打ちひしがれそうだった…



あの日の撮影中、発作で倒れたあたしは救急搬送された。

本当はそのまま入院した方がよかったんだけど“荷物”を取りに行きたくて

無理やり入院を翌日からにしてもらった。

帰宅したあたしが入院用お泊りセットを鞄に詰めていると横で貴が小言を漏らす。

「荷物、デカすぎねぇ?これいるか?」

「眠れない時用!絶対いる!」

そう言って抱き枕を貴から奪還する。

「カメラや雑誌は?」

「(慣れない看護師さんや同室の患者さんと)会話の糸口を探すため!」

旅行かよ?と貴はバカにするけれど、健康優良児には絶対分からないと思う。

「もう放っておいて!」

プンプンしながら、部屋に戻りパジャマの厳選に取りかかった。
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