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「絹、散歩行くか?」

そう言って甲ちゃんが顔を出した時はすでに夕方になっていた。

幸い、夏で日照時間が長いから外はまだ明るい。

「お仕事はいいの?」

「うん。片付けてきた」

術衣に白衣を羽織った甲ちゃんの顔に昨日みたいな陰りはもうなかった。

見せないように、いつも通り接してくれていただけかもしれないけれど。

「車椅子だけどいい?」

「甲ちゃん、あのね…」

「あ、日焼け止め塗っとく?女の子の必需品なんでしょ?」

スルーされたと思って、いじけてみせると…

「その話は後でね」

車椅子に乗せられて連れてこられたのは中庭ではなく、屋上だった。

数日ぶりに吸う屋外の空気は新鮮でいいけれど

「お散歩…」

ではないと思う。

「俺のお気に入りの休憩場所… と言う名のサボる時の場所」

…先生、仕事してください。

「たまに逢い引きに使われてたりもするらしいけどな」

もしかして、甲ちゃんも…?と聞こうかと思ったけど、あたしなんかが口出しできる問題じゃない。

それに“彼女”がいても全く不思議なことじゃない。
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