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「恒兄も織依さんと使ってたかもね…」

遠くを見つめながら甲ちゃんが呟く。

「そのことなんだけど」

「ん?」

「あたし手術、受ける…!」

「何か、話飛んだよね…?」

甲ちゃんが不思議そうに眉をしかめる。

「パパが言ってたチャンスに賭けてみたい。もうタイムリミットが近いのが自分でも分かるから、

甘えたりうつむいたりしてられないよね」

嘘つき…

本当はそんないい子なんかじゃない。

怖すぎて、逃げ出したい。

いっそ、“度胸試し”とでも称して全力疾走で逃亡してやろうかと思うくらい本当は弱虫。

「…今まで一人でよく頑張ったね」

それでも甲ちゃんは大きな手で頭を撫でてくれる。

「もう楽になっていいからな。絹が背負っているものは全部引き受けるから」

ストッパーが外れたように堪えてた涙が溢れ出す。

入院してから、あたしは泣き虫になった。

それは甲ちゃんがいつも手が届く距離にいてくれるせいかもしれない。

「だけど何で受ける気になったの?」

指であたしの涙を拭いながら彼が尋ねる。

「だから…」

この場に及んでまだボケる気!?
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