sEcrEt lovEr
額にひやっとした感覚を覚える。

冷たくて気持ちいい…

ゆっくりと目を開けると、いつもの安心の出来る彼の手がそこにはあった。

「微熱だったんだって?大丈夫か?」

日向家兄弟がお出かけ中、椎名先生と見たアルバムの写真にまたショックを受けていつの間にか眠っちゃっていたらしい。

「オフじゃなかったの?」

「オフだよ。だから今日は見舞い客」

きっと甲ちゃんのことだから、他にも気になる患者さんや仕事があったに違いない。

それでも少しの時間を割いてあたしのところにも寄ってくれるのが今は素直に嬉しい。

「面会の時間はもうとっくに終わってますよ?」

なのに顔が赤く染まっているのに気付かれたくなくて、わざと憎まれ口をたたいてしまう。

「な?でもそこは医者の特権だよ」

「職権濫用て言うんだよ、それ」

そう話すあたしに甲ちゃんはからかうようにでも優しく 頬をつねってみせる。

「そんなこと言う子には家族特典も使わせてあげないよ?」

入院費の何パーセントか控除とか、受付を優先とか?

いやいや、携帯電話じゃあるまいし“家族割”みたいなものは聞いたことがない。

そもそも同居のことを秘密していること自体忘れちゃいないだろうか…
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