sEcrEt lovEr
「少し起き上がれる?無理なら楽しみは来年に持ち越すけど?」

「何の話…?」

「花火。見たかったんでしょ?相手が俺で悪いけど…」

賑やかなお祭り会場でも浴衣でもないけれど、隣にいるのが甲ちゃんならあたしには十分すぎるご褒美だ。

「ううん、見たいっ!」

そうは答えたものの冷静に考えたら、手術を間近に控えている患者を連れ出す医者なんているだろうか。

「…ねぇ、甲ちゃんは怒られたりしない?無理ならいいよ」

すると甲ちゃんはゆっくり口を開く。

「絹の半分は心配症でできています…」

…!?

図星だけど、バカにしてる?

「負担は全部引き受けるて言ったの忘れた?」

苦笑いする彼に、ふと屋上で手術を決意した日のことを思い出す。

「じゃあ、そうだなー… 俺とデートしよ。そしたら絹も共犯で罪悪感も半分。だろ?」

“デート”して共犯だなんて甲ちゃんにしかない発想だ。

思わず笑ってしまう。

院内一のモテドクター(By看護師さん調べ)を一患者ごときが独占してデートするなんて確かに重罪だ。
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