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「でも… 少しの間だけだからね?」

ひょいっと抱き抱えられて車椅子に下ろされる。

毎日ベッドで過ごしているからだろう、いつの間にか自分の身体すら支えきれなくなるくらい体力が失くなっていた。

「…直に良くなるよ。前以上にね」

一抹の不安をも感じ取って励ましてくれる…

が、感動したのもつかの間。

やっぱり彼との“デート”は一筋縄ではいかない。

「あーれー 日にち間違えたかなー?」

あの日みたいに屋上に来た所までは良かった。

でも今回は双眼鏡を手にした甲ちゃんと車椅子のあたしが暗闇に包まれた空を並んで仰ぐ。

これじゃあ、ただの天体観測と変わらない。

かれこれ何分経っただろうか。

思い描いていた花火デートとはかなりかけ離れた結果となった…
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