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貴との時間は穏やかに過ぎてゆく。

同居を始めたばかりの時は嫌で堪らなかったのが、今となっては何だか不思議だ。

なのに

「…っく」

突然、胸を誰かに鷲掴みされている強い痛みに襲われる。

これはきっとマズイ方の痛みだと感覚では分かったものの、

自分ではどうすることもできなくて次第に増していく痛みに顔を歪める。

泣きすぎたのがダメだったのかな。

まだ伝えなきゃいけないことがあったのに…

聞きたいこともいっぱいあったのに…

「おい、大丈夫か?!」

異変に気がついた貴がナースコールを押してくれた。

病室に駆けつけた看護師さんはあたしに酸素マスクをつけると、他の人に日向先生を呼ぶように伝えてくれる。

貴はその間ずっと手を握って励ましてくれた。

「…っはぁ…はぁ…」

上手く呼吸ができない。

「絹… 苦しかったね、もう少しだけ頑張ろうな?」

すぐさま甲ちゃんも来てくれて、聴診器を当てられる。

「貴、辛いなら外に出てろよ…?」

胸の音を聞きながらも、横にいる弟への気遣いも忘れない兄。

「…っ!」

何も言わない貴はきっと怖いんだと思う。

小さい頃も発作を怖がられて、まともに友達なんかできなかったから分かるの。

それなのに握りしめた手を離さないのは何で…?

一人ぼっちにしてくれない彼らはつくづく変わり者だ…
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