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その時、上から彼をめがけて何かが降ってきた。

"ベチャ"

…シャツ?

「スイマセーン、洗濯物落としちゃいました」

悪びれることなく兄がベランダから顔を出す。

慌てて洗濯物を取りに来た彼は耳元で「中に入ってな」と促した。

「わざとですよね?」

秦ちゃんはと言うと、もちろん怒ってる…

「ハハハ、ひどいな~。万有引力の法則を実践しちゃっただけじゃないですか」

最悪だ。でもこれって助け舟を出してくれたんだよね?

いや、この人のことだから ただ覗いていたらうっかりって可能性もありうる。

背中越しに怒る秦ちゃんの声が聞こえたが、あたしは玄関の扉を静かに開けた。
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