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例えば いつもより早く目が覚めた朝は何をしよう?

運動も兼ねて一駅分歩いてみたり、ネイルやメイクをほんの少し頑張ってみる?

角にできたあのカフェに行ってみるのもいいかも。

…だけど、問題はあたしには選択権がないこと。

「絹、今日は早く帰ってこれる?」

「あたしは帰りたいけど…」

制服に着替えソファーで寛いでいると、ママがオープンキッチンから声をかけた。

あたし、橘 絹香(タチバナ キヌカ)は生まれつき身体が弱い。

高校生だというのに一人で出歩けない、いや出歩かせてもらえない。

「貴はバイト休みなんでしょ?」

「ソウデスネー」

眠たそうな顔でアイツが答える。

でも決して“兄”なんかじゃない。

母親二人にそれぞれ子供が一人ずつ。

これが我が家の構図。

元々親友同士のママ達は お互いダンナがいないのをいいことに、少し前から同居することになった。
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