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ほとぼりが覚めたであろう頃、貴の部屋を訪れる。

ドアからこっそり覗くと彼の姿がそこにはあった。

「あの… 入ってもいいですか?」

「どうぞ」

昨日帰国したばかりの兄には部屋がない。

空部屋もないから貴の部屋を取り敢えずシェアしているらしい。

もっとも、貴はそのことに大反対だが。

「何で聞かないの?さっきの事…」

あんな現場を目撃されたんだから、事情を聞かれる覚悟はしてたのに。

「話したければ、絹ちゃんから話してくれるでしょ?それとも聞いた方が良かった?」

イタズラっぽく兄はそう答える。

「ありがと…」

「絹ちゃん、あまり無理しちゃだめだよ」

部屋を後にしようとするあたしに彼が声をかける。

あたしの身体のこと… ママ達に聞いたのかな。

「パパに会える日が来るまで普通に過ごせたら、それでいいの」

どこの病院でも完治は難しいと言われ続けた。だったら、あたしは…

「諦めるのはまだ早いよ」

何を根拠に?もう過剰な期待はしない。
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