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それを感づいてか、彼女は甘い言葉を奏でる。

「Thanks god, I could meet you」
(貴方に出会えて本当に良かった…)

それはすぐ横にいないと聞き取れない程の小さな声だったが、

強い意志が込められた言葉に少年はじっと耳を傾ける。

「But its only MY memory… please forget about me」
(でも これは“あたしだけの”思い出でいい… あなたは忘れて)

「どういう意味?」 そう彼が聞こうとした時、涙をうっすら浮かべ彼女は呟いた。

「アリガト…, カイ…」

「ジュリ… ジュリ…?」

呼んでも返事は返ってこない。

それでも小さな身体を抱き抱えて、名前を呼び続ける。

「Wake up, Julie! No!」
(起きろよ、ジュリ!だめだって!)

彼女の左胸をいくら優しくさすっても 目が開くことはなかった。



空には彼の叫び声を打ち消すかのようにドクターヘリがけたたましい音で飛行していた。
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