sEcrEt lovEr
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彼女がぐっすり眠っているのを確認すると、部屋の扉をそっと閉めた。

彼の場合 気持ちをリセットしたい時は自然と屋上へと足が進む。

この日もそうだった。

感じたことのない重圧が、直前になって重くのしかかる。

これが“身内切り”という禁忌《タブー》の代償なのか。

宙を仰いでみると 夜もすっかり明けて、代わりに雲一つない青空から光が差し込んでいた。

彼は思う。

この広い地球の長い歴史の上では、自分はとてつもなく ちっぽけな存在であり、

その自分が今更悩んだ所で、何かが変わるとも考えにくい。

ふぅと大きく息を吐き出すと、パラパラ捲っていた医学書をパタンと閉じた。

…長所なのか、はたまた短所なのか この手の切り替えの速さはAB型ならではだ。

ぼんやり 外のビル群をいつかの双眼鏡越しに覗いてみる。

慌ただしい朝の始まりも、空の色も 何一つ変わらない…

今日が「あの人」との何年か越しの約束の日ということ以外は。
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