sEcrEt lovEr
十分なくらい眠っていたはずなのに、まだ酸素が薄く感じてしまう。

それくらい体力は落ちちゃっているわけで、ベッドに体を預けたまま身動きが取れない。

発作が起きた翌日だから 仕方ないか…

でも それも今日までだねとママや悠耶さんは穏やかに笑っていた。

これまでに何度か手術は受けているのに、結局 緊張感が解れることは一度もなかった。

大体の流れは把握してる常連サンなのに…

静かで薄暗い部屋は余計に不安を掻き立てる。

ベッドサイドには 普段は低血圧で寝起きが悪い貴の姿があった。

面会時間前だけど、朝一の手術だから特別に入れてもらったらしい。

「…パパ 見ててくれるかな?」

「当然だろ?あの人のことだから一時もお前の側を離れるわけねーじゃん」

親バカっぷりがこそばいいけど、何だか嬉しい。

「…で、あいつとはあれから何か話したわけ?」

手術前日の昨日、あたしはついにお兄ちゃんの正体を知った。

それはパパをなくしたあたしを気づかう兄弟達が仕掛けた優しいトリック。

でも未熟なあたしはそこに隠された本当の意味にずっと気がつくことが出来ないでいた。

いや、もしかするとどこかで見ない振りをしていただけなのかもしれない。

「昨日は発作が起きちゃったから…」

あれからずっと酸素マスクを余儀なくされている。

まともな会話どころではなかった。
< 218 / 233 >

この作品をシェア

pagetop