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「甲斐くん、余裕だねぇ。僕なんか軽く不眠症なのにさぁ」

イタズラっぽく笑う神谷先生も今日はあたしの手術に立ち会ってくれるらしい。

何でも甲ちゃんの熱烈なオファーだったとか。

前もしてくれた先生がいると安心する。

「そうなんですか?僕なんか つい数時間前までここで寝てました」

仮眠室争奪戦に負けたとかで、あたしより先に寝たよね?

「起きてからどこ行ってたの?」

「あ~、屋上で光合成してた」

…本当、“天才”の考えていることは分からない。

「絹、みんなついてるからね?あと少し頑張りなさいよ」

「うん…!」

涙をうっすら浮かべたママの手を精一杯握り返す。

気がつくとベッドの周りには大切な人達が集まっていて、みんなに囲まれていた。

身体も生まれつき弱くて、生活にも規制があって 何一つ満足にできなくて

ある時から『パパに会えれば、消えてなくなってもいい』て思いに支配されていた。

でも今は違う。

あたしが元気になること… それがここにいる人達への責めてもの恩返しだと思うから。
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