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「ちょっと体勢変えようか」

支えられながら上体だけ起こしたものの、力が入らなくて甲ちゃんに抱きかかえられる。

「怖かったね… もう大丈夫だからな」

病院の時みたいに優しく背中をさすってくれる。

「甲斐~、あんた何時だと…!?」

隣の部屋の話し声に気がつき かけつけた悠耶さんは本来いるはずのないあたしが

息子に抱かれていることに一瞬状況が読めないという顔をする。

「俺の鞄取って!そこの黒いヤツ」

甲ちゃんは片手でベッドサイドの灯りを付けると受け取った往診鞄から聴診器を取り出す。

「胸の音聞くねー」

聴診器が服の隙間から入ってくる。

それが例え甲ちゃんの手でも抱かれながら聞かれるのはやっぱり恥ずかしい。

でもそれ以上に もし発作が起きた時に一人だったら…という不安が大きい。

「ねぇ、絹ちゃん大丈夫なの? 救急車呼ぶ?!」

「悠耶、静かにしてよ… 」

慌てふためく悠耶さんとは反対に冷静に心音に集中する甲ちゃん。
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