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前よりもちょっとしたことで発作が起きやすくなったことは事実。

ママの判断も賢明だと思うけど…

不完全燃焼なあたしと貴はリビングで勉強したり、飽きたら雑誌を読んだりしながら過ごしていた。

ただ貴の機嫌が悪いからか、あたしが病み上がりだからか空気はいつもより重たく感じた。

「お前さぁ」

沈黙を破ったのは貴だった。

「兄貴のこと、好きなの?」

…何を口走っちゃってるの?

「誤解だって!あたし好きな人いるもん!!」

咄嗟にとは言え、全力で否定してしまったことに後になって申し訳なさを感じる。

そりゃ甲ちゃんはポスターも一日で話題になるくらい見た目もかっこいいし中身…

は少し抜けてるけど優しいし、他の女の子ならこの同居も羨ましいんだろうな。

貴はどんな奴?と続けて尋ねる。

「…名前もどこに住んでるかも分からない人」

「は?何それ?一目惚れかよ?」

改めて言われると確かにそうだと思い知らされる。

「小さい頃に会って以来だからそうかも」

今頃、お医者さんになってるのかな。

今のあたしを見たらお兄ちゃんはどう思うかな…
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