社内恋愛なんて
あの日のことを思い出して、泣きたくなった。


胸が苦しくて、痛い。


「放してっ!」


 渾身の力で守の手を振りほどいて、私は走って書物庫を出た。


 ――嘘つき。


守の嘘つき。


みあを守れるのは俺だけだって言ったじゃん。


守るどころか、私を一番傷つけたのは誰?


 信じてたのに。


大好きだったのに。


幸せになれるって思ってたのに。


ううん、幸せだったのに。


一夜にして私の世界は崩れ去った。


何もかも、見える世界が変わった。


幸せだった何もかもが、恨めしい存在に変わった。


結婚も、仕事も、大好きな守でさえも。


何もかもが私を苦しめるものへと変わってしまった。


 もう遅いよ、守。


もう、元には戻らない。
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