社内恋愛なんて
部長は、私に気にも留めない様子で自分のデスクにある資料を見始めたので、更に寂しさは強くなった。


思わずため息が出そうになって慌てて深呼吸をする。


今更何を求めているんだろう。


自分の感情の起伏についていけない。


　部長から視線を外し、バッグを肩にかけると、おもむろに部長は顔を上げた。


「本当は帰ろうかと思ったんだが、会社に寄って良かった」


　何かトラブルでもあったんだろうかと思って、再び部長の顔を見ると、優しげな微笑みを浮かべていた。


「湯浅に会えたから」


　胸がどくんと大きく鳴った。


普段見せない笑顔で、そんなことを言われたら心拍数が上がってしまう。


どんどん胸の鼓動は速くなって、顔が熱くなっていく。


頬が赤くなっていることに気付かれたら恥ずかしいので、慌てて下を向いた。


部長の顔が見れない。


「俺は、諦めるつもりないから」


　なんのことだろう。


疑問に思うも、まだ顔は上げられない。


これ以上甘い言葉を言われたら心拍数が大変なことになってしまうというのに、部長はたたみ掛けるように言う。


「湯浅のことが好きだ。振り向いてもらえるように、何度でも言う。俺はお前が好きだ」
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