社内恋愛なんて
それから順調に付き合っていって、三年の月日が流れた。


忙しくてなかなか会えない時も、会社でほんの少しだけ顔を合わせるだけで幸せな気分になれた。


社員食堂で、定食を選んでいる姿を遠くの席で眺めている時。


廊下で鉢合わせした時。


守が残業しているのを近くの喫茶店で待って一緒に帰った時。


守のマンションに泊まって、朝に同じ電車で通勤した時。


同じ会社だから仕事の悩みも相談しやすいし、共通の友達も多いからいつも話題は尽きなかった。


楽しかった、本当に。


この幸せがずっと続くと思っていた。


憧れの会社に入社できて、とても優しくて愛されてると実感できる素敵な彼氏と付き合えて、自分がどんなに恵まれているのかその時は分からなかった。


どこにでもある、当たり前の日常の幸せだと思っていた。


今となれば、あの頃の私はとても素直で純粋で世間の辛さなど味わったことのない、温室育ちの恵まれた子供のようだった。
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