社内恋愛なんて
守からプロポーズをされて、後日一緒に指輪を選びに行って。


お互いの両親にも、きちんと報告もした。


どちらの親も、喜んで私たちの結婚を祝福してくれた。


本当に、何もかもが上手くいきすぎていたんだ。


幸せすぎて怖いと思うことすらなかった私に与えられた、人生で初めて体験する、乗り越えられない大きな壁。


悲しみ、憎しみ、絶望、消失感、そして理不尽さ。


幸せだった毎日が、あの日、あの時、あの一瞬で崩れ去った。


私は二度と、あの頃のようにあんな無邪気に笑えない。


それでも、知らなければ良かったなんて思わない。


知らなければ幸せなんて、世間ではよく言うけれど、私はそうは思えない。


だって、大げさじゃなく死ぬほど辛い思いをしたけれど、今でも後悔していないから。


守と別れたこと。


今でも後悔していない。
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