社内恋愛なんて
あの日は、久しぶりに守が私のマンションに泊まりに来ていた。


最近、メールの返事が遅くて少し寂しく思っていた。


でも、忙しいという守の言葉を疑いもしていなかった。


あまり負担をかけたらいけないからと思って、私からも連絡を控えていた。


だから、守に会えることが純粋にとても嬉しかった。


張り切ってたくさん夕飯を作った。


もうすぐ結婚するから、料理教室に通いだしたこと、守には内緒にしていた。


料理教室で習ったおかずのあれこれを守に披露して驚かせてやろうって思った。


準備を全部整えて待っていると、玄関のチャイムが鳴った。


「は～い！　今行くね」


　新調したエプロン。


守、気付いてくれるかな？


　玄関を開けると、少し疲れているようだけれど、笑顔を浮かべている守がいた。


「ただいま、みあ」


　新婚さんみたいに、玄関に入るなりちゅっと軽いキスをくれた。


それだけで、今まで寂しくて少しむっとしていた思いが浄化されるみたいになくなった。
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