社内恋愛なんて
……キス、しちゃった。


枕に顔を埋(うず)める。


なんてことしちゃったんだろうという気持ちと、恥ずかしい気持ちと、嬉しい気持ちがあいまって、意味もなく叫びたい気分だった。


大きな声を出す代わりに、足をバタバタさせる。


もうすぐ３０になるというのに、枕に顔を埋めて足をばたつかせているなんて、こんなところ絶対に人に見られたくない。


キスされたくらいで、思春期の女の子みたいに動揺している。


でも、恋愛経験が浅い私にとっては一大事件だったのだ。


あんなキス、初めてだった。


付き合ってもいない人とキスするのも初めてだった。


しかも、ただのキスじゃない。


身体の芯が燃え上がるような激しいキスだった。


もしもあの時、大家さんが来なかったらどうなっていたんだろう。


部長の手は、私のふとももを触っていた。


もしも、あと少し大家さんが来るのが遅かったら……。


そこまで考えると、私はまた叫びだしたくなった。


なんてことをしてしまいそうになったんだろう。


恋人でもない人と。


しかも部長は私の上司だ！
< 13 / 359 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop