社内恋愛なんて
「何回そういう関係になったの?」


 守が黙っているので、矢継ぎ早に質問をする。


もう、止まらなかった。


「数回、だと思う」


 これみよがしな大きなため息が出る。


具体的な数字は傷付くだけだからもう聞かない。


「飲みに行って、そのまま勢いでっていうならまだ分かるけど、数回の関係はもう確信犯だよね」


「本当に、ごめん」


 守は深々と頭を下げた。


謝られて傷が治るのなら苦労はしないのだ。


「私と、別れたかったの?」


「いや、それはない。別れる気は全くなかった」


 守は慌てて顔を上げる。


「じゃあどうして」


 守は、辛そうに顔を歪めた。


「……魔が、差したんだと思う」


「魔が差しただけなら数回も続かないでしょう」


「……そうだね、ごめん」


 項垂れる守。


私は一体守から何を聞き出したいのだろう。


何を聞いたって、何て答えられたって責めることしかできないのに。


不毛なやりとりだと分かっていても、感情がなかなか抑えられなかった。


守を前にして気が付いた。


私は怒っているのだ、とても。
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