社内恋愛なんて
……これが、浮気発覚前に言われていたら、きっと泣いて喜んでいたと思う。


けれど今は心に響かない。


今更気付いたって、遅すぎる。


それに、守の言葉は信用できない。


「誰よりも何よりも? じゃあ親も友達も縁切って、仕事も辞めて、誰も知らない土地で私と暮らせる?」


 意地悪な質問をした。


そんなの無理だと分かっているのに。


「いいよ。みあがそうしたいなら」


 守はためらうことなく言い切ったので、逆に私が面食らってしまった。


「嘘だよ。守はそんなことできるわけない」


「本当だよ。信じてもらえないなら、実際に行動する。そしたら少しは俺のこと、信じてくれるようになるかな?」


 守の目は真っ直ぐで、覚悟を決めたような雄々しい雰囲気を身に纏っていた。


本当に仕事を辞めてしまいそうで、私は焦った。


「冗談だよ。守をからかっただけ」


 守は、ほっとするのではなく、残念な様子で下を向いた。


こんな風な展開になると思っていなかったので、気持ちがざわざわと落ち着かなくなってきた。


でも、どんなに何を言われても私の気持ちは決まっている。


別れないという選択肢はない。
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