社内恋愛なんて
 なんだかんだで、会話はできた。


守と少しでも話したら泣き出してしまわないかが一番心配だった。


カッと頭に血が上ってしまうことはあっても、こんな風に話せるのならもう大丈夫だ。


会社で会っても避けずになんとかいられそうだ。


 私は自分の目的が達成されたので、もう帰ろうと思った。


このまま話していても意味がない。


楽しく世間話をする間柄でもないのだから。


「それじゃあ、守。私たちが別れたこと、ご両親に伝えてね。私も親に言おうと思う」


「待って。別れずにすむ方法も考えてほしい。

俺のこと許せなくて信用できないことが問題なら、さっきみあが言った、仕事辞めて親も友達も縁切るって方法実行するから。

それでもまだ足りないって言うなら、裸になって逆立ちして街中歩いたってかまわない。だから……」


 切羽詰まった様子で言う守に、私は少し同情してしまった。


なんだかんだ言っても嫌いにはなれないのだ。


じゃあ今から裸になって街中歩いてきてと言うほど憎くもなれない。


「守言ったよね。どう償えばいいか分からないって。一つだけ方法があるの。知りたい?」


「……うん」


「私と別れること。私が望むのはそれだけ」


 守は私をじっと見つめ、涙を堪えるように唇を噛みしめた。


「それじゃあ守。また会社で」


 そう言って私は、その場を立ち去った。
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