社内恋愛なんて



書類の束を抱えながら、一枚一枚シュレッターにかけていく。


私のもやもやとした恋心も、こんな風に破かれてしまえばいいのに。


そうしたら、こんなに悩むことはなかった。


キスされた時だって、嫌だと言って押し返せたのに。


自分から部長の背中に手をまわして、理性が吹き飛ぶようなあんなキスにはならなかった。


あまりにも情熱的で、頭が真っ白になるほど気持ち良かったあのキスは、きっと一生忘れることができない。


「はあ……」


 本日何度目かの溜息を盛大に吐き出した。


「湯浅」


 優しい声色がして振り向くと、ため息の源が私の後ろに立っていた。


「部長!」


 私は思わず一歩仰け反って、驚きの声を上げた。


「これも、シュレッターにかけておいてくれないか?」


 十枚ほどの書類を部長の手から受け取り、なんで私はただ後ろに立っていただけなのにこんなに驚いてしまったんだと悔いた。


明らかに意識しているのがバレバレじゃないか。


何をやっているんだ私は。


いいかげん、大人になれ!
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