社内恋愛なんて
「ありがとう。今日一日のやる気が上がったよ」


 少し恥ずかしそうに言うので、言われたこちらからしてみれば、更に恥ずかしくなってしまう。


お世辞など言い慣れていないのが丸わかりだ。


私を見る目も、醸し出す雰囲気も、好きだと身体から溢れ出ているようで、見つめられるだけで無駄にドキドキしてしまう。


そんな風に感じてしまうのは自意識過剰かもしれないけれど、でも明らかに前とは違う。


 目の見える範囲に部長がいるから、いつでも胸がドキドキしてしまう。


三年前の社内恋愛よりもドキドキする。


「湯浅、筆記テストの注意点を彼女たちにレクチャーしてもらえるか?」


 詳しくはこの書類にまとめておいたから、と言ってマニュアルを渡された。


彼女たち、とはもちろん採用受付の女の人たちのことだ。


説明会では直接部長が指導してきたけれど、本社になってからは私が間役となって彼女たちを指導する。


「はい、かしこまりました」


 ざっとマニュアルに目を通すと、読むだけで流れが分かるように簡略にまとめられている。


さすがだなと思った。
< 152 / 359 >

この作品をシェア

pagetop