社内恋愛なんて
「分かった分かった。これからはなるべく顔を出すようにするよ。

何か困っていることはないか?」


 彼女たちは、分からないことや提案などを口ぐちに述べていく。


それを丁寧に受け答えしている部長。


私は少し離れたところから、その様子を見ていた。


入り込めない空気を感じて、説明会で彼女たちが部長と仲良くなったことを見せつけられている気がした。


 ヤキモチを妬いている自分に気付いて、自己嫌悪する。


部長の告白を断った私に、妬く権利なんてないのに。


「じゃあ、後は湯浅の指導をしっかり受けて頑張ってくれよ」


 名前を呼ばれて、はっとした。


目線を上げると、部長が優しい眼差しで私を見ていた。


胸がとくんと高鳴る。


「え~、もう帰っちゃうんですか」


「すまんな、仕事が溜まっているんだ」


 部長が帰ってしまうと、三人は肩を落としがっかりしていた。


特に瀬戸内さんは大きなため息を吐いて、残念な様子を隠そうともしていない。


「瀬戸内さんって、部長のこと……」
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