社内恋愛なんて
さっき聞きかけていた言葉を吐くと、瀬戸内さんは隠す気も恥ずかしがる気配すら見せずに、当然のことのように頷いた。


「はい、好きです。でも、振られちゃったんですけどね」


「ええっ!?」


 思わず大きな声が出た。


そんなの、部長から何も聞いてない! 


いや、私に言う必要なんてないことなんだけど……。


「好きな人がいるって言われました。

彼女がいるってことですか? って聞いたら、彼女になってほしかったけど、断られた。でも諦めるつもりはないって言われたんで、じゃあ私も諦めませんって返したんです。

そしたら苦笑いしてました」


 瀬戸内さんは振られたというのに、あっけらかんと私に話してくれた。


同じ受付の二人も知っているようで、ああその話ねと笑いながら聞いていた。


 私は変な汗が出てきて、なんて言ったらいいのか分からなくなった。


きっと、部長の言っている人は私のことだ。


瀬戸内さんが振られたというのに、私はその話を聞いて少し嬉しく思ってしまった。


罪悪感で胸が痛んだ。
< 156 / 359 >

この作品をシェア

pagetop