社内恋愛なんて
「剛田部長の告白を断る人なんて、どんな女性なんでしょうね。

部長のレベルじゃ満足できないくらい凄い人なのかもしれないですね。

モデルとかキャビンアテンダントとか、どこかの令嬢とかなんでしょうねえ……」


 瀬戸内さんは遠くを見つめるようにして言った。


 私はモデルでも令嬢でもない、普通の、とりたてて取り柄のない女だ。


瀬戸内さんや他の二人のように美人でもないし、もう若いとはいえない。


私が部長を好きになる理由は山のようにあるけれど、部長が私を好きになる理由がさっぱり分からない。


 なんだか申し訳ない気持ちになってきた。


こんな自分に告白してくれたのに、断ってしまって、瀬戸内さんからすればお前何様だよってかんじなんだろうなと思った。


 奇跡のようなありがたい話なのに、奇跡のようにありがたい話だからこそ怖くもある。


部長はとても素敵でモテる人だ。


これからもきっとモテ続けるんだろう。


そんな人と付き合って、ずっと私一筋でいてくれるなんて無理に決まってる。


だって私より綺麗で頭が良くて性格もいい素晴らしい女性はたくさんいるから。


 そんな人に言い寄られたら、部長だって守のようにふらふら傾いてしまうかもしれない。


もう男性を100%信用できなくなってしまった。


信用できなくて怯えている素直じゃない女は、可愛くない。


私は部長にふさわしくない。



 好きだけど、好きだから、付き合うことが怖くてたまらない。
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