社内恋愛なんて
「はい、分かりました」


 必死に作り笑いを浮かべる。


ここは会社。


私情を持ち込んではいけない場所だ。


「さっきからため息ばかりしているようだが……」


 一歩近づいて、私の顔を見つめる。


 ため息してるの見られてたんだ!


ていうかそんなにため息ついてたんだ。


しっかりしろよ、私!


「それに、なんだか目が少し赤い。寝不足か?」


 部長は、指先でそっと私の前髪を上げ、覗き込むように顔を近付けてきた。


 近い、近い! 顔が近すぎます、部長!


「いえ、違います! えと、花粉症で!」


 咄嗟に顔を背け、部長から距離を置いた。


顔が赤くなっているのを気付かれたくないからだ。


「そうか、大変だな」

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