社内恋愛なんて
「部長が送ってくれるっていうんだから、送ってもらえばいいじゃないですか」
ニコニコと悪気は一切ない顔で迷惑な一言を放つ後輩。
面倒見がいいけれど、余計なお節介の時もあると言われてしまう彼女。
今まで悪く感じたことはなかったけれど、今日は声を大にして余計なお節介だと言いたい気持ちをぐっと堪える。
「本当に大丈夫ですから。お気遣いなく……」
私は手を広げて、二人をなだめるようにして言った。
「湯浅」
部長は仕事を振る時のような張りのある低い声で私を呼んだ。
反射的に姿勢が伸びる。
「決定事項だから」
端的に述べられた命令。
決定事項、なんて言われたら、もう「はい」と返事をするしかない。
私が折れたことに満足した様子の部長は、意気揚々とオフィスを出て行く。
その後ろに項垂れながら付いて行く私。
一緒に帰るというのに、出張に同行する上司と部下にしか見えないのか、他の社員たちから好奇の目で見られることはなかった。
私と部長が二人きりでも誰も何とも思わないし嫉妬されることもないというのは、楽だけど少し悲しい。
部長と私がどうにかなるなんて絶対ないと思われているんだろうなと思うと、みじめで卑屈な気持ちになってしまう。
仕方ないことなんだけど。
ニコニコと悪気は一切ない顔で迷惑な一言を放つ後輩。
面倒見がいいけれど、余計なお節介の時もあると言われてしまう彼女。
今まで悪く感じたことはなかったけれど、今日は声を大にして余計なお節介だと言いたい気持ちをぐっと堪える。
「本当に大丈夫ですから。お気遣いなく……」
私は手を広げて、二人をなだめるようにして言った。
「湯浅」
部長は仕事を振る時のような張りのある低い声で私を呼んだ。
反射的に姿勢が伸びる。
「決定事項だから」
端的に述べられた命令。
決定事項、なんて言われたら、もう「はい」と返事をするしかない。
私が折れたことに満足した様子の部長は、意気揚々とオフィスを出て行く。
その後ろに項垂れながら付いて行く私。
一緒に帰るというのに、出張に同行する上司と部下にしか見えないのか、他の社員たちから好奇の目で見られることはなかった。
私と部長が二人きりでも誰も何とも思わないし嫉妬されることもないというのは、楽だけど少し悲しい。
部長と私がどうにかなるなんて絶対ないと思われているんだろうなと思うと、みじめで卑屈な気持ちになってしまう。
仕方ないことなんだけど。