社内恋愛なんて
「腹減ってないか? 飯でも食べてこう」


「え、あ、はい」


 飯でも食べないか? じゃなくて、食べてこうと言われたので、はいとしか返事のしようがなかった。


部長はもしかしたら、私が押しに弱いことに気付いたのではないだろうか。


誰にでも押しに弱いのではなくて、部長だから押しに弱いのだと言いたくて堪らなくなった。


キスされて受け入れたのだって、部長だから受け入れたのだ。


部長のことが、好きだから……。


「どこに行こうか? ここら辺はよく知らないからな」


「それなら、もう少し行ったところに、美味しいイタリアンがあるんです。あ、イタリアンより和食とかの方がいいですか?」


「いや、湯浅が好きな店の方がいい。どんなものが好きなのか興味がある」


 またもやの直球に顔が赤くなる。


黙って俯いてしまったので、部長はちらりと横目で私を見た。


「どうした?」


「……部長って、けっこうストレートなんですね」


 照れ隠しで苦笑いすると、部長は慌てるように言った。
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