社内恋愛なんて
 背が低い私の顔を覗き込むように見ていたせいで、少し屈んでいた姿勢。


その姿勢を正し直立した部長を目の前にすると、やっぱり大きいなと見上げてしまう。


私の身長は153センチで、部長はたぶん180センチくらいはあると思う。


長身で端正な顔立ちに、抑えようとしていても胸がときめいてしまう。


「どうした?」


 じっと部長の顔を見つめてしまっていた私を不審がって、ぐっと顔を近付けた。


思わず昨日のキスを思い出してしまって、かあっと顔が赤くなり身体が固まった。


「顔も赤くなっているようだが。風邪でも引いたのか?」


 顔を近付けたままやたら優しい声色で言う。


 顔が赤いのは、あなたのせいです! 


 そんなこと言えるはずもなく、身体が硬直したままやっとのことで言葉を吐き出した。


「だ、大丈夫です。ご心配なく……」


 まるでロボットのように口だけを動かしながら言った。


「そうか、あんまり無理するなよ」


 ポンっと頭を撫でられ、今まで見たこともない格別の笑顔を見せて去って行く部長。


私は放心状態でしばらく動けずにいた。
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