社内恋愛なんて
部長の問いかけに、私はなおも答えない。


言葉がでない。


出ないけれど、嫌じゃない。


そう、答えがないというのは了承のサインだ。


 部長は自身のシートベルトを外して、私にゆっくりと近づいてきた。


どんどん顔が近付いてくる。


色気を帯びた瞳に吸い寄せられながら、鼻先がくっつきそうになるほど縮んだ距離にきて、私はゆっくりと瞼を閉じた。


 触れ合う唇。柔らかな唇の感触が、初めてキスした時のことを思い出させた。


あの時も、車の中だった。情熱的な大人のキス。


 今回のキスは、優しいキスだった。


でも、とろけるように甘いキス。


触れ合うだけのキスから、軽く押し付け舐めるようなキスへと発展していく。


それだけで子宮が疼き、腰が砕けそうになる。


身体の力が抜けて、半開きになった唇に部長の舌先が侵入してくる。


 何度も啄(ついば)み、求め合う。


絡み合う舌先が熱くて、キスがとっても気持ち良くて……。


もうどうにでもしてくださいという気持ちだった。


 このまま、もっと部長と触れ合いたい。


疼く身体を静めてほしい。名前を呼んで繋がりたい。


淫らな欲求が頭を支配する。
< 170 / 359 >

この作品をシェア

pagetop