社内恋愛なんて
「まさか記憶がなくなるほど酔っているとは思ってなかったんだ。

意識もしっかりしているように見えたしな。

覚えてないと言われたから言えなかったが、際どいところまでいったんだ。

黙っていてすまなかった」


 頭を下げて謝る部長に、私は慌てて言葉をかけた。


「いえ、あれはあそこまで酔った私が悪いんです。

自分から脱いだっていうし、きっと私が煽(あお)ったんだと思います……」


 覚えていないけれど、きっとそうだと思って言うと、部長は否定せずに気まずそうに口を噤(つぐ)んだ。


その顔を見て、やっぱり私が煽ったんだと確信した。


申し訳ないやら恥ずかしいやらで、穴があったら入りたい気分だ。


「話を戻すが……。

その時、湯浅は泣いて言ったんだ。

傷付くのが怖いと。

何があったのかは分からないが、俺はその時湯浅を守りたいって思った。

湯浅の傷を癒せる男になりたい。

ゆっくりでいいんだ。

ゆっくりでいいから、好きなら俺を信じてみてくれないか?」


 部長の真剣な想いが伝わってくる。


とても嬉しい言葉で、感動している一方、ところどころに出たフレーズに古傷が痛みだす。
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