社内恋愛なんて
「お忙しいなら無理しないでも大丈夫です」


「あっいえ、大丈夫です。一緒に行きましょう。パスタ楽しみです」


 私はにこりと笑って了承した。


いつもは総務部の女の子たちと社食で食べているけれど、出張などで外で食べることもよくある。


いつも決まった人数で食事しているわけではないので、今日私が抜けたところで何も困ることはない。


 瀬戸内さんもにっこり笑って「それじゃあ、お昼まで仕事頑張りまーす」と言って仕事に戻っていった。


 もしかしたら部長の慌てた様子を見て、瀬戸内さんは何か気付いたのかもしれない。


それで、私をランチに誘ったのかも……。


少し、怖くなった。


何を言われるんだろう。


思い出したのは、同期で仲が良かった美奈子の笑顔。


美奈子も美人で、笑うと白くて綺麗な歯並びが一際輝いていた。


 時々、人が怖くて堪らなくなる。


笑顔の裏で何を考えているのか。いい人だと思っていたのに、裏切られた時の空虚感。


うわべだけじゃ、人は分からない。


どこを見て信用すればいいのか、何を基準にすればいいのか。


分からなくて壁を作ってしまう。
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