社内恋愛なんて
 驚いて目を見開くと、瀬戸内さんは呆れた顔をしていた。


「部長の好きな人は、モデルかお嬢様かなんかだと思ってましたけど、湯浅さんだって知って妙に納得したんです。

むしろ部長らしいなと思って好感度が上がったくらいです。

相手が湯浅さんなら勝てないなって思ったから潔く身を引こうって思いました。

それなのに、そんな言い方はないんじゃないですか?」


 瀬戸内さんは静かに怒っていた。


私は嫌味で言ったわけではないけれど、確かに失礼な言い方だったかもしれない。


瀬戸内さんは部長のことが好きだったのだから。


「ごめんなさい。

本当に嫌味で言ったわけではないんです。

部長には私なんか不釣り合いだって思っているのは事実です」


 本当に申し訳なく思っていることが伝わるように、心を込めて言った。


けれど、瀬戸内さんは許してはくれていない様子だった。


「私、湯浅さんのこと、真面目で素直でいい人だなって思ってました。

この歳になって純粋でいられるって凄いことだなって感心してました。

部長と湯浅さんはお似合いだなって思ったから応援しようと思ってランチに誘ったんです。

それなのに、私なんてって言われたら、部長に振られた私はどうすればいいんですか」
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